薔薇を追い越す <3O

耳のないうさぎを追いかけて
足元に溜まるのはプラスチックのごみだけ
はだしの足には痛すぎる
流れる血は薔薇よりも赤く
人間くさいにおいを放ってる
帽子をなくした帽子屋は
空いたコーヒーカップを逆さにしてる
おかわりの四文字は口にださない
注がれるのをいつまでも待ってる
テーブルから立たないで
ずっと待っている
狂ったうさぎは笑い続ける
壊れたTVとおんなじだ
眺めているとだんだんそれに慣れてくる
見てるのは笑い続ける映像だけ
消さないから消えない
見てるから見える
リボンをなくした少女は
周りを汚して探したけれど
見つからないと持っていたことも忘れて
色褪せたリボンを見つけても
とても頭につける気になれず
指先でつまんだままゴミ箱に入れた
流した血も渇いた喉も変わらない目の前のものも捨てたリボンも
夢の中ですら追ってきて
何かと一緒に迫るけど
出ない涙と同じで
寝ぼけた頭には浮かんでこない
だから薔薇は白いまま
誰も見ずに枯れていく
色をつけてもらえないまま
静かに枯れていく