雲を追いかけて <3O

ふわふわ浮かぶ雲みたいに

見上げて追いかけて
口をあけては笑われて
届かない人の影を追って
いつの間にか暗やみに取り残されていた

ふわふわふわふわ
大きくてやわらかで
空を隠してしまいそうな
力のある人

空に手を伸ばすのは
届かないことを知らないからじゃない
届くことを心のどこかでは
望んでいるのかもしれない
それとも
伸ばしていることを
わかって欲しいのかもしれない

雲に向かって手を伸ばす
なるべく近いところに立って
その大きなやさしさに
包まれたいと祈るように
精一杯両手を広げて
つま先で立ってジャンプして
見て　見て　気づいて　抱き上げて
ふわふわふわふわ逃げないで

追いかけても追いつけない
追いかけなくても離れてく
風に流され月日も流れ
ふわふわふわふわ逃げないで

独り占めなんてできるわけがないこと
とっくの昔に知っていた
絵を飾る額縁のように
なにかのための誰かだと
それでも必死で両手を伸ばす
走って走って追いかける

ふわふわふわふわ
もうそこにない
追いかけたのに消えちゃった
ふわふわふわふわ
わからない
見ていた雲がどれだったか

もうわからない
私の気持ちもふわふわと
浮いては風に流れてく
涙も一緒にふわふわと
落ちては風に流れてく